2023年03月19日

鞘塗り 蒔絵本作業開始・・・

鞘塗り 蒔絵本作業開始・・・

昨日は鞘塗り蒔絵本作業の一回目。
いよいよ蒔絵のスタートです。
まずは、純金梨地粉を使って日に照らされた「城山三峰」を表現しました。


一気に蒔いてしまう複雑な段取りで、
背面の螺鈿粒と同様にグラデーション表現が難しく調整に難航しましたが、
夜遅くまでかかって何とか蒔き切りました(^^;


皆さん、お疲れ様でした~。


実物鞘全体の様子を見て判断し、
CGシミュレーションと比べ裾野を広くしてます。

ここからの仕上げがまた難しいのですが、
しっかりやらねば~ですね。

つづく。。。

  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 11:41Comments(2)螺鈿(らでん)・貝細工金箔・金粉鞘塗り

2023年03月15日

鞘塗り 蒔絵の段取り・・・

鞘塗り 蒔絵の段取り・・・


鞘塗り蒔絵の段取り。

この城山三峰を金粉で描く手順は、
背面の螺鈿粒で表現した城山と基本的に同じなんですが、、、
上塗りが仕上がって来ているだけに、失敗できない緊張感があります(^^;

こちらは山ですが、もう一方の未公開鞘塗りでは雲。
大きなモチーフに臨む時は、
視野を広くして心を落ち着けないといけませんね。

これからがまた勝負どころであります。  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 21:04Comments(0)金箔・金粉漆塗り鞘塗り

2023年01月23日

長く感じる1月・・・

長く感じる1月・・・

2023年が始まって3週間ちょっと、、、長く感じる1月です。

今月残りの工房作業は、鞘塗りと修理1点がメインです。
しかし、新たなご依頼品にも手を付け出して、、、
早めに動いて来月へ繋げましょう。

今年は兎も角「すぐGo!」です(^^;


ご覧頂けない修理案件。
金梨地粉を使って修理ですが、中々苦労しております(^^;


新しいご依頼品。
粒貝サンプルを幾つか作って、2月の本番へ。。。


だいぶ前に友人から依頼のあった案件も、、、
もう始めんとですね(^^;


納期が無いとついつい、、、ではダンメ!!(;'∀')


そして、、、先日は、前からイクイク詐欺をして中々行かなかった「らぁめん蔵持」へ。


ここのチャーシューはメガ盛り!
スープをすする最後の最後までチャーシューが残っていたのは生まれて初めて。
食べても食べてもチャーシューが一向に減らんとです(^^;
☆上質な麺とスープ、そしてお肉を目いっぱい召し上がりたい方はココへ(笑)
  


2021年08月24日

金継ぎ完成・・・

金継ぎ完成・・・

金継ぎ作業は最終段階を迎え、やっと完成しました~。
障害を負った君たちが、またお客様の元へ帰って行きます。
しっかりやり直せるからね~♪(^.^)


深川製磁お茶碗は、粉固めがしっかり乾き、最後の磨き工程。。。


まずは磨き粉で磨き上げ~です。


脱脂綿に茶黒いのが付きます(^.^)


こちらは金彩がとれないよう、隙間を縫うように!(^^;


そして、、、鯛牙で丁寧に丸粉の頭を潰します~。
キラキラして来ました。


丸粉1号を蒔いていたコーヒーカップも、、、


布や手磨き、そして洗浄も施して、やっと完成です!
君たちもよく付き合ってくれましたね~(^^)/


ちょっと個性的にしたかった深川製磁お茶碗は、、、
こんな感じで仕上がりました。


金属の質感が出てる感じですかね~。
少し鈍目の光り方。。。(^.^)


あなたも、結構渋めに上がりましたね~。
そこはお口が当たるとこなんで、、、
だいぶたっぷりと金粉盛っときましたよ。


あなたも、、、そこ、お口当たるっしょ~(^^;


ま~またそこんトコロよろしく!

そんなこんなで、皆さん旅立って行きます。
もう私に会わなくて済むようにね。
でも、、、またいつでも帰ってきていいよ♪ (笑)

傷ついても、障害を負おうとも、、、
きっとやり直せるんだからね。




  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 22:49Comments(0)金箔・金粉漆塗り

2021年08月21日

金継ぎ 金粉蒔き・・・

金継ぎ 金粉蒔き・・・

本日は、先日ちょっとしくじって仕切り直しとなった作業、、、
金継ぎ器たちの金粉蒔きです。


蒔絵用のヤワめ弁柄漆を蒔絵筆で塗り、、、
ちょっと室に入れて湿気を吸わせ、、、


弁柄漆が半乾きになったところで金粉の蒔き付けです。
本当にいつもこのタイミングが難しくって、
いまだに失敗することがあります(^^;


蒔き付け完了~。
右と下のコーヒーカップは金消し粉、左のコーヒーカップは金丸粉1号、
そして、上の深川製磁お茶碗は金丸粉3号で。
ちょっと器の様子などを見て、金粉の種類を変えて見ました。

今回は、マットな表面の器には優しい雰囲気が出る消し粉、
艶のある器には個性的味わいが出る丸粉を使っております。

質感の対比効果を狙ってのことですが、、、
仕上がり具合は果たして如何に!?

  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 19:20Comments(0)金箔・金粉漆塗り

2021年08月02日

平お膳 納品へ・・・

平お膳 納品へ・・・

もう一年半程前の2020年2月にお預かりしていた平お膳。
数々の中断を経て、この程やっと補修が完了しました。


 お直しが出来上がった状態の平お膳。


 お預かりした当初の塗りの様子。
 下地まで達した深い亀裂も含め、相当な数の傷が入っていましたので、
 これは大部分を塗り直す必要があると判断。


 お膳の側面は、既存の塗り色に近しい「うるみ色」を調合して塗り直し。


 側面は内側もあるので、この塗り直しはなかなかに作業ボリュームありました(^_^;)


 底面の黒漆も全て塗り直し!(^^;



 補修前の蒔絵の様子。
 蒔絵が薄くなり、やはり周辺にもたくさんの傷が入った状態でした。
 この蒔絵が入った面は朱漆が痩せて相当薄くなってます。これをどうするか!?
 蒔絵を残しつつ塗りの補修をする困難さはハンパありません!(^^;


 補修が完了した様子。
 深い傷が入ったところに、まず生漆や錆を注入して防水措置を施してから塗り補修。
 次に、上塗り(朱漆)の一部が研ぎ出されて中塗り(黒漆)が見えて来るのも覚悟して、
 ともか慎重に研磨と磨きを重ね、上塗りに入った傷を消して行きました。
 全部の傷は消し切れませんでしたが、摺り漆も数回行い、
 仕上げ磨きを丁寧に行って、ある程度目立たない状態にまでしました。


 消えた蒔絵にも何とか金粉を蒔いて。。。
 当初の蒔絵師の技には全く及びませんが!(-_-;)

ご予算の関係もあり、完璧なレベルには程遠いですが、
塗りも蒔絵も、応急処置的に塗り直しや補修を施す所までは行いました。
それでも、最初の状態からしたら、やれるだけやった、、、という感はあります(^^;
 

この平お膳は、ご依頼主のご実家(本家?)に古くからあったという品物。
お歳を召したご親族にお渡しされる予定だったのですが、
新型コロナウィルス蔓延の影響があって、なかなかお集まりになるのが困難な状況となり、
こちらも補修が難しいこともあって製作延長に拍車がかかり、納品がノビノビに!
本当にお待たせ致しましたっ!!(^^;

しかしながら、かなり劣化の進んだ漆器の直しだけに、
蒔絵補修や磨きのテクニックで得るものも大きく、相当な勉強となった品物でした。
ご依頼主には、陳謝と共に心より感謝を申し上げます!m(__)m  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 18:04Comments(0)金箔・金粉漆塗り

2021年07月26日

指に金粉・・・

指に金粉・・・

本日は蒔絵作業。。。
ということで、金消し粉を扱っていたところ、、、


 指に金粉が付いてしまいました~。
 金ふたつ~なんちゃって(^-^;

真綿で金粉を蒔き付ける際に、
人差し指、中指、親指で真綿を持つものですから、
どうしても金粉が指に付きやすいんですね。。。

しか~~~しっ!この写真をアップするとき
注意しなければならないことを思い出しました!
そ・れ・は・・・「生体認証」です!!

最近は指紋で個人が特定されますし、
スマホなどを起動するために指紋認証が使われていますね。

もう世間では当たり前のようになっているようですが、
まだまだ自分にとってはあまり馴染みのない感じです。
しかし悪用される恐れがあるので、気を付けなければなりません!!

金粉の付いた指は、あまりにもクッキリと指紋が浮かび上がってましたので
これはもう間違いなく盗用されるレベル!(;'∀')

ということで、ご覧の通り写真に加工を加えてアップすることにしました。
なんかこう、ややこしい世の中になってきましたね。。。(^^;

  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 19:56Comments(0)社会つれづれ金箔・金粉

2021年07月03日

探し物見つかる・・・

探し物見つかる・・・



 探し物=「鯛牙」が見つかりました!
 漆塗りのお師匠様から頂いた大切な材料なんですが、
 別の箱に入っていたとは、、、
 整理整頓の必要性を改めて実感~(^^;


 新たな金継ぎご依頼あり!
 味わいのあるコーヒーカップですね~。


 ところが、、、金継ぎで蒔いた金粉を磨くための道具=鯛牙に危機迫る!
 ひび割れが入っており、いつパカっと行くか?(^^;
 ということで、いつでも交換できるよう
 見つかった牙たちにはスタンバっててもらいましょう。よろしく!

   


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 11:00Comments(0)金箔・金粉漆塗り

2021年03月25日

金継ぎが完成~料亭へ・・・

金継ぎが完成~料亭へ・・・

お預かりして2ヶ月弱。
取り掛かりが遅くなったのと中断もはさんで、やっと金継ぎが完成しました!
近日中に料亭へお届けします。


 丸粉を蒔いた所を鯛牙で磨いて、、、


 さらに磨き上げて完成です。
 また丸っと優しく、ほっこりお客さんに接して下さいね(^.^)


 皆さん、揃い踏みでまたしっかり働いて下さい(^.^)  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 11:24Comments(0)金箔・金粉漆塗り

2021年02月26日

金継ぎをしないと・・・

金継ぎをしないと・・・


 料亭からお預かりして早1ヶ月。
 やっと金継ぎに手が付けられそうです。
 「欠け」の器ばかりですので、3月中に何とか(^^;  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 22:25Comments(0)金箔・金粉漆塗り

2020年09月08日

メガネ筆置き・・・

メガネ筆置き・・・

ここ数日、蒔絵をすることが多いのですが、、、


 集中して作業した後に脇を見ると、、、あれま!?
 メガネに筆を置いとるじゃなかですか(^^;

作業中は老眼鏡、手元には通常のメガネ・・・
そういうことですか。。。(笑)  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 15:31Comments(0)金箔・金粉

2020年09月02日

久々に蒔絵作業・・・

久々に蒔絵作業・・・


 久々に蒔絵作業です。
 道具や純金粉を用意して、、、ちょっと緊張です^^;

台風が近づいているので、湿度が上がって来た感じですね。
風が入ってこないよう、全窓をピシャッと閉めて!
金粉が飛んだら大変なことになりますからね~汗。  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 22:58Comments(0)金箔・金粉漆塗り

2020年04月22日

金が高価な時代に・・・

金が高価な時代に・・・

新型コロナウィルスの影響で金価格が高騰、、、
1gが6500円前後を行ったり来たりと、もう大変な感じです(^^;

ということで、当然ながら蒔絵や箔押しで使っている
金粉、金箔の価格も跳ね上がりまして、、、
当分の間は新たに仕入れるのを避けようかと!

暫くは在庫分でしのげそうですが、
コロナショックが1年以上続いたら、かなり困って来そうですね。。。


 またまた箔押しの作業あり。
 ともかく大切に使って行きましょう!  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 19:23Comments(0)金箔・金粉

2020年02月21日

鞘塗りご紹介~波紋鞘

鞘塗りご紹介~波紋鞘

鞘塗りご紹介の二つ目は、昨年秋に製作した「波紋鞘」。
湖面に落ちる水滴で出来た波紋を、金箔、銀箔の切り廻し(砂子)で表現しました。



 鞘全体像です。



 鞘の曲面に対して曲線の表現。
 以前、尺八につる草を絵付けしたことがありましたが、
 その時と同様、デザイン画のイメージを実物に落とし込むのが難しかったです。


 ベース色は深い緑色。
 湖面のイメージ色としました。。。


 箔を押した後は、よく乾燥させてから箔の上から摺り漆をうっすら施しました。
 特に銀箔は空気中の酸化硫黄物で焼ける(錆びる)ので、摺り漆は欠かせません。

波紋鞘のイメージ作りにおけるコンセプトは、
伝統的仕様=金砂子を使いつつ、シンプルかつモダンに自然の情景を表すこと。
波紋の配置や間の取り具合にかなり気を配りながら、デザイン作業を進めました。

箔押しするエリアが限定的な上、鞘という3次曲面であるため、
いつもとは違うマスキングも方法を考え、作業を展開。
どういう手順・工程で進めるか、かなり思案した次第です。

まだまだ工夫の余地がある製作ではありましたが、
大変勉強になるご依頼でした^^

  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 14:19Comments(0)金箔・金粉漆塗り鞘塗り

2020年02月20日

鞘塗りのご紹介~金箔鞘

鞘塗りのご紹介~金箔鞘

お客様の許可を頂きましたので、
ご依頼→当方で塗りや装飾を施した幾つかの日本刀鞘をご紹介して行きます。
まずは昨年夏~秋にかけて製作した金箔鞘について。


 金箔鞘の全体像です。


 この箔押しご依頼は、通常の仕様(金箔平押し)とはだいぶ違うものでした。


 細かい切り廻し=砂子(金箔の粒)で3重に箔押ししております。


 箔押しが終わって、蒔絵筆で銘入れ(黒漆)を行い、最後にうっすらと摺り漆を施しました。



 金箔鞘、箔押し作業の様子もご紹介。まずは箔濾し作業から。。。


 箔押しの上に重ねて箔を蒔き、、、


 蒔きつぶして、、、


 あかし紙や真綿で押さえて、、、


 乾燥後に真綿で箔払いして、、、


 真綿でそっと磨いて箔押しの1工程が完了です。。。
 この作業を3回繰り返したわけですが、
 それ以前に、木地の状態から下地~中塗り迄も施しました。

鞘塗りを全工程行いますと、やはり工程数の多さが改めて分かります。
各工程気を抜かずにやらないと、後で必ずしっぺ返しが来る漆塗り。
その厳しさを毎回味わった次第です。


 普通の箔押しとは違い、拡大して見ると豹紋のような表情が。。。

初めて行った難しい作業ではありましたが、また一つ勉強になったご依頼でありました。

  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 13:04Comments(0)金箔・金粉漆塗り鞘塗り

2020年02月07日

曲禄の完成と納品・・・

曲禄の完成と納品・・・

ようやく曲禄(お坊様の椅子)の塗り直しが終わり、
先日、筑後のご依頼主=お寺へ納品して来ました。


 お寺の本堂にて。

既存の漆塗りを剥ぎ、金具の錆落としと再塗装を行いましたが、
作業の度に数々の難問が発生し、その都度課題に取り組みながら進めました。



 こうやって眺めると、感慨深し。。。長かった(^^;


 背もたれは歪むし、気を使いました。
 調整しながら、最後は何とか全体を組み上げることが出来ました。


 箔押しの技術はまだまだ、、、修行が必要です。


 金具は再塗装。
 彫られた線が潰れないよう、塗膜は極力薄くなるような工夫をしました。 


 ビフォ~


 アフタ~


 座面ビフォ~


 座面アフタ~


 本堂の立派さには圧倒されました。
 箔押しや彫刻など、、、凄いです。


 獅子と牡丹。素晴らしい。。。


この塗り直しは、ほぼ1年がかりとなりましたが、
仏具や木工に関して凄く勉強になったご依頼でした。
また永くご活用されることを願っております!  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 14:37Comments(2)金箔・金粉漆塗り

2019年10月27日

鞘塗り 箔押し作業・・・

鞘塗り 箔押し作業・・・

10月も、もう終わろうとしています。
作業に追われていると、時間が経つのが本当に早いですね~。

さて、今月は鞘塗りの作業も色々とやっておりますが、
箔押しをする鞘が2本あり、一つは既に納品。
もう一本を現在急いで作業しております。


 後で施す箔押しのことを考えると、テクニック的に難しいマスキング。
 鞘の曲面に対して曲線の図案ということが難しくしている大きな要因です。
 先に考えていた手法は使えないことが分かり少し中断しておりましたが、、、
 やっとマスキングの応用テクを考えつきました。
 あとは図面目視というアナログ的手法で何とかクリヤーしました。


 しっかり準備して、いざ本番へ!
 まずは箔を濾す作業から、、、秘密の振りコマも用意します。。。


 粗目の砂子(切り廻し)を濾して、、、もう少し細かくします。


 金箔の作業は昨日無事に終わり、、、本日、銀箔の箔押し作業へ。
 銀箔は金箔に比べて幾分厚みがあるので、少し要領が変わって来ます。
 気を緩めることなく、しっかりやっていかないと~。


 そして、銀箔の作業も無事に終わりました~。 
 ベストは尽くしていますが、箔払いをしてみるまで上手く行っているか
 ハッキリとは分かりません。どうか修正無く終わりますように!
 





  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 18:30Comments(0)金箔・金粉漆塗り

2018年09月29日

中国古筆の修理が完成・・・

中国古筆の修理が完成・・・


中国古筆の修理(補修)が完成しまして、昨日お客様の元へ直接納品に行きました。

これ迄で一番難しい修理作業となり、色々と試行錯誤するうちに
昨年2月から1年7ヶ月という長期間でお預かりすることとなってしまいましたが、
何とか整えてお渡しすることが出来て、だいぶホッとしております。
今回もまた凄く勉強になったご依頼でした。



 完成した全体像です。
 清朝初期(乾隆帝などの時代/およそ300年程前)のものと思われる筆で、
 お預かりした当初は、螺鈿の約7割が剥離=消失し、朱漆も一部が剥げ、
 金彩も所々大きな傷やこすれ落ちた箇所が見受けられる状態でした。


 基本的に雲竜図です。
 龍の顔はほぼ二つとも剥げ落ちた状態でしたが、
 資料図案やわずかに残った部位を手掛かりに、描き起こしてみました。


 筆筒をはめた状態の全体像です。


 筆筒の拡大写真です。


☆修理に至るまでの高低をいくつかご紹介します(以下)。



 下地がむき出しに。。。
 今回の修理で一番難儀なのがこの下地。何で出来ているかが謎でした。。。
 水が付くと強烈な粘性を帯び、乾燥すると硬化するのです。
 膠ですと通常の温度の水では溶けにくいはずで、小麦粉や米粉とはかなり違う粘性の強さ。
 植物由来のような気もしますが、もう300年も経っているのに、
 粘着性の機能を保持しているとは。。。この組成は何なのか?

 以上の通り、この下地は水で溶け、周囲の朱漆が侵され剥離し出すので、
 水研ぎが出来ないという事態に。
 空研ぎを中心に、水を一切使わない作業での調整が続きました。


 朱漆が剥げたところも大変でした。。。
 だいたい色漆は、元の色と合わせるのが非常に難しいのです。
 色の調合、乾燥条件の研究を進めましたが、
 結局求めるレベルの80%くらいしか到達しませんでした。
 最終的には、エイジング処理で既存の朱漆と何とか風合いを似せることで、
 周囲とのバランスを図った次第です。


 螺鈿補修は、フィルムトレースでの正確な形状写しから実施。


 螺鈿接着の研究。
 膠での接着をまずは試み、アレコレと調合を試すも、、、なかなか上手く行かず。


 研究と並行して螺鈿加工は進め、、、トリーミングを。


 既存螺鈿と色味が合う所を慎重に選んでカット。。。


 螺鈿は、形状が複雑なものもあり、
 尚且つ筆の曲面にも馴染ませなければならないため、
 少し特殊な方法で熱矯正をかけました。


 仮置きをして調整をかけながら、、、


 湾曲具合も確かめながら、、、


 膠による螺鈿接着研究は、袋小路に入り込んでいました。。。
 結果的には接着強度が足らず、既存下地との色味合わせも上手く行かず、
 この努力は結局実りませんでした。。。


 次なる接着手段を発案。。。
 現代的なテクニックを使う方向で研究を進め、、、


 色々と試した結果、接着強度の高い樹脂に着色して
 下地と似た色合いを出すという方向で落ち着きました。


 接着に伴い、螺鈿をガチガチにテープで固定。
 それでも足りない場合は、重石をかけて、、、


 螺鈿接着が終わったところです。
 この後、研ぎを施し絵付けを行って螺鈿は完成。
 金彩は、水を僅かに湿らせた綿棒で金彩表面に付着した汚れを落としつつ、
 傷や擦れたところには摺漆を施して金消し粉を蒔き付け、
 引っかき線を針で入れての補修となりました。

 この金彩も箔なのか金泥なのかはよく分かりませんでしたが、
 強力に漆と密着していることで、清掃作業は比較的楽に進められました。


修理作業の概要は以上の通りですが、
ここまでハードルが高いことになろうとは思わず、
骨董品修理の奥深さを痛感した次第です。

それにしても、先人の知恵には計り知れないものがあるものですね~汗。  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 22:42Comments(2)螺鈿(らでん)・貝細工金箔・金粉漆塗り

2018年08月30日

尺八 金蒔絵の完成・・・

尺八 金蒔絵の完成・・・

漆塗りと蒔絵のご依頼を頂いていた尺八がこのほど完成し、
先日お客様がお受け取りに来られまして直接納品致しました。


 朱塗りの尺八にして欲しいという珍しいご依頼。
 モチーフは、山桜に鶯(うぐいす)と半鐘蔓です。


 本当に長い間お預かりしておりましたが、やっと、、、という感じです。
 大変お待たせ致しました!


 鶯は、丸粉蒔絵をベースとして透き漆で描き起こしてみました。
 山桜は、花びらを丸粉蒔絵、枝や幹を梨子地塗りで。


 蒔絵の表現は、多岐に渡って様々なものがありますが、
 試作を重ねながら、取捨選択して本番に臨みました。


 山桜に蔓を二重螺旋で絡ませました。
 変化自在な生命の神秘を意識してデザイン。


 半鐘蔓も丸粉蒔絵にて絵付けしております。


 背面の半鐘蔓。


 山桜の幹たち。根本は途切れた形に、、、生命の根源は謎ですね。


 当工房の銘「瑞緒」を背面に。。。


 尺八を製作した工房の銘(焼き印)はそのまま残しまして、
 その横に当工房の銘を螺鈿で入れております。


 最後の仕事=鶯の眼光を入れる作業。
 梨子地粉3号の一粒を黒目に針で貼り付けてみました。


今回のご依頼は蒔絵を主としたものとなりましたが、
やり甲斐と共にその難しさを痛感した次第です。本当に今後の糧となりました。
お客様には改めて感謝申し上げます。
  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 13:37Comments(0)金箔・金粉漆塗り楽器装飾

2018年06月15日

ギター蒔絵は最終工程へ・・・

ギター蒔絵は最終工程へ・・・

ギター蒔絵は、やっと終盤戦に向かってきました。

蒔絵で一番手のかかっている龍は、、、
金丸粉を蒔いて乾燥させた後、生漆を浸透させて丸粉を固め、その後に摺漆。


 大枠で研ぎを入れてから、鯛牙(たいき)で丸粉の表面を潰すように撫でて磨きました。
 この作業を施すと、キラキラと丸粉が光ってきます。

雲の部分は、全て金梨子地紛での蒔絵を施していますが、
その上から梨子地漆を重ね塗りしております。
雲の流れごと(エリアごと)に塗り重ね回数や研ぎの程度を変えることで、
上塗りされた梨子地漆の厚みを変え、金梨子地紛の色味に変化をつけました。
摺漆や磨き作業でペーパー等の研ぎ足を段階的に無くしながら、艶上げに持って行きます。
 

 そして、最終工程。。。
 龍、雲、ベース黒、ギター表面全体に摺漆を施してよく乾燥させた後、
 呂色磨き粉で全体を手磨きです。


 一旦磨き上がりましたが、研ぎ足が少し目立つところを無くしたり
 艶のレベルをもう一段階上げるために、再度摺り漆と呂色磨きを施します。
 「もう一丁!」という感じでしょうか。
  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 10:27Comments(0)金箔・金粉漆塗り楽器装飾