鞘塗りご紹介~龍虎螺鈿鞘
鞘塗りご紹介のラストは、今年に入って完成~納品した
『 黒漆蝋色塗龍虎螺鈿鞘(大小)』*仮称です。
難しい課題も多くあり、当方の様々な事情もあって製作に1年以上を要しました。
やっと先月納品することができましたが、内容の濃いご依頼を頂いた上、
長期間に渡って忍耐強く待って頂いたお客様には本当に感謝しております!
龍虎が睨み合う構図での鞘大小セットというオーダーです。
全体に青貝粉蒔きを行い、鐺付近に菊紋も配もしております。
龍鞘の表裏姿。
青龍は天界にて霊芝雲(れいしぐも)を伴い、天象の神として地上界を見下ろす、、、
そのようなイメージでもあります。
龍鞘裏面の霊芝雲たち。
霊芝は万年茸の中国での呼称。
この形を雲にかたどり、吉祥文様として古くから使われてきたとのこと。
虎鞘表裏姿。
古くから、虎には竹との組み合わせが多く見受けられますが、
紅葉とのミックスという斬新なオーダーを頂きまして、
色合いとしては金色の裏彩色を施した螺鈿にて紅葉を表してみました。
虎もまた、青龍と呼応するかのように青みの裏彩色を施して青虎と成す。
龍と虎は共に青もしくは緑系統とのオーダーがお客様からありましたが、
このことが、デザインする上でイメージ作りに欠かせない重要な要素となりました。
虎鞘裏面の紅葉螺鈿。
鞘大小の表裏に施した菊紋。
銀の裏彩色を施した螺鈿粒を菊紋にかたどり、研ぎ出し螺鈿として表現しました。
今回の製作で難しかったことは、
複雑な絵柄の螺鈿を、かなり曲面のきつい鞘躯体に対し、
いかにスムーズに貼付するかという点、
また、施した全ての螺鈿を一つの曲面とするため、
特に貼付した絵柄螺鈿を極力傷めることなく、
全体を研ぎ出して終わる点が挙げられます。
以上のミッションを成功させる為には、
平板で固い螺鈿の加工から貼付に至るまでのテクニック向上および刷新と、
マスキングテクニックの新たなアイディアが必要となりました。
これらの難点を何とかクリアでき完成と相成りましたが、
今回得られた技術や内容は、次なる製作に必ず活かして行けると確信しています。