螺鈿鞘のご紹介・・・
3月から6月にかけて制作した、総螺鈿貼りの鞘『黒漆蝋色塗龍鱗紋様螺鈿鞘』のご紹介。
約5500ピースの螺鈿をグラフィックソフトで図面化し、龍の鱗を表現しました。
東京の刀剣販売会社「葵美術」様から制作を依頼されました。
ご注文はロンドン在住のクライアントとなります。
自作のオリジナル作品としては初の海外納品。もうすぐロンドンへ旅立ちます。
作品コンセプトは一匹の龍。龍の体を一本の鞘に見立て、その鱗紋様を螺鈿で表現しました。
当工房に送られてきた鞘。
鞘は2本作られ、普段はこのような白木作りの白鞘に真剣(古刀)が収められ保管されます。
観賞時には、装飾入りの鞘へ特別に真剣が収められます。
鯉口の接着。
絹着せ作業。強靭な下地とするため、シルクを纏わせます。
絹地を漆で固めたところ。
何重にも下地を重ね塗りしていきます。
下地には、上新粉、土、漆などが使われます。
今回の下地は、一切の妥協、手抜きなく、伝統的な「本堅地」と言われる堅牢な手法で仕上げました。
生漆で下地を塗っている様子。
下地は常に塗り固めながら、次の工程へ進みます。
黒漆による中塗りが終わったところ。
アナログとデジタルの両方の手法を使って、約5500ピースの螺鈿パーツを図面化し、加工しました。
青みの特に強いアワビ薄貝を選抜し、螺鈿同士に毛一本程の隙間が空くよう、デジタル調整。
螺鈿パーツの下書きと組み上げの様子。
パーツカットと確認作業。
一枚一枚、根気強く正確に漆で貼っていきます。
螺鈿の上から黒漆を塗り重ねます。
炭による水研ぎの様子。
塗り、研ぎ、磨きを繰り返し、、、
最後は手で磨きます。
クライアントのご要望により、当工房の銘を入れました。
栗形(組み紐を結びつける留め具)の裏側に工房名を黒漆で書き入れます。
銘を入れた様子。
完成状態。鯉口、栗形付近の様子。
鐺付近の様子。
完成した全体像。
梱包前の全体像。
今回は、日本美術に対する深い敬愛を持たれていらっしゃる
海外のお客様からのご注文ということもありまして、
イメージ作りから制作全般に渡ってグレードの高さを求められる仕事でした。
幾つかの課題を何とかクリヤーし、今後の飛躍につながる仕事であったと振り返っております。
お客様には、今回素晴らしいご依頼とテーマを頂いたことに深く感謝申し上げます。