2022年11月19日

螺鈿硯箱の修理⑨ 欠損螺鈿の製作・・・

螺鈿硯箱の修理⑨ 欠損螺鈿の製作・・・

11月に入ってから進めていた螺鈿硯箱修理の模様を
ここで一旦まとめてご紹介。。。

東京出張から戻って、諸々他のご依頼も入って来ておりましたので
本件もその合間で少しずつ進めておりましたが、、、


まずは今月頭の話~螺鈿が欠けたところを詳細に確認。
ピンセットで指し示した先などは、螺鈿が直線的に継いであるラインですね。
大きな絵柄ですので、ここは薄貝を継いだのでしょう。


アワビ薄貝が使われておりますが、、、特に大きい欠損パーツでは
在庫の薄貝を何十枚も当てて、模様や色味が近いものを選びます。

硯箱を元々製作された人が、どのような薄貝を使ったのか、
もしくはどのような作り方をしたのかを読み取りながら材を選んでいきます。

既存の螺鈿(薄貝)は、厚みが所々マチマチで、
厚い所では0.15mm、薄い所では在庫の厚目タイプと近い0.12mm程と分かりました。

従って、補完用としては全て厚目タイプを使うこととし、
厚みが足らない箇所については、裏色を重層して対応することになりそうです。
これは手間ですが、怠ると違和感(差異)が出過ぎてよろしくない感じになります。


次に、欠損箇所に透明フィルムを当ててトレース(型取り)をします。

可能な限り隙間が出来ないよう既存螺鈿と補完螺鈿を継がないといけませんので、
このように正確なライン取りが必要になります。



裏色については、もうずいぶん前に作っておいたものを再確認しました。

既存螺鈿の表面は、何層にも摺り漆を施してあることと、
積年の汚れが付着した為か、しっかり茶褐色になっております(^^;

既存螺鈿は、水を使用して剥がした際に
一部の表面はふやけて取れてしまい斑になっている箇所があります。


また、準備している裏色がどうしても濃い目になるため、
ここは既存の茶褐色の様子に似せた仕上がりにするためにも
蒔絵金線以外の螺鈿表面を一旦除去し、摺り漆を薄めにし直すことにしております。
(*写真下の葉螺鈿は表面除去をした状態)

この除去には相当手間がかかりそうですが、
補完分を含めた全体の螺鈿色調を揃えたり、
統一感のある違和感の無い仕上がりにするには必要な作業となりそうです。


以上、かなり細かい作業工程も想定しつつ
ともかく補完螺鈿パーツの加工を開始しました。


最初は小さなパーツから!
トレースに基づいて加工します。
形状もこのように削って調整しながら、、、


合わせます~微妙!本当に微妙です(^_^;)


こちらはかなり小さい部分を補完しましたが、、、
さて、どこを継いでるでしょうか(^.^)


先週は大物のパーツ補完に取り組みました。
上蓋のメイン螺鈿ですね。


やはり、ここは相当難しかった!
何と言いましても材料選びが難しい。
200枚くらいの中から一番合うものをやっとこさ見つけ、、、


トレース通りにキッチリと刃を入れます。
予備がないものと考え、一発勝負であります!(>_<)
※一応2番手は用意しておりますが(^^;


慎重に切り離し、、、


本体と合わせましたが、、、今のところはOKでしょうか(^^;
この先の作業で、また緊張の連続ではあります。


現在もこのような補完作業に邁進中、、、

つづく。。。


  


Posted by 瑞緒(ミズオ) at 16:36Comments(2)制作日記螺鈿(らでん)・貝細工漆塗り修理